緑茶

2005.05.06 Friday 12:22
ogawat


 この映画の見どころは趙薇の演じる一人二役であり、このアンビバレントな役柄に映画の核心部分がある。

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 一人は大学院生の呉芳、また一人はバーのピアニスト朗朗。この二人は全く対照的な性格で、眼鏡をかけた呉芳は几帳面な性格で恋人もおらず、(そのため?)毎日のように紹介所の斡旋でお見合いを繰り返し、その席では必ず緑茶を注文して二人の愛情の行く末を占うという奇妙な行動を繰り返している。もう一方の朗朗は明朗そのもので、派手な服を着て、夜な夜なピアノを弾いては、花束を捧げる男性なら誰とでも寝てしまう。
 ある日、姜文演ずる陳明亮はお見合いで呉芳と知り合う。会ってすぐに緑茶占いを信じるか信じないかで喧嘩となってしまい、席を立つ呉芳。陳明亮は追いすがるようにして声を掛け、ささやく。「これからホテルの部屋を取って、ゆっくり…」破廉恥な言葉に呉芳は激怒して、その場でタクシーを呼んで立ち去った。ところが数日後、陳明亮はわざわざ呉芳の学校校門前で待ち伏せ、謝罪の言葉を並べ立てる。彼も婚約者を親友に奪われ、自暴自棄になっていたのだという。呉芳はいささか同情して陳を見る。そこで陳はいった。親友の元へと去って行く女を思い切り殴ってやったのだが、心が晴れなかった、と。「殴る」という言葉を聞いた途端、呉芳は顔色を変えて、「私は女を殴る男が大嫌い!」と吐き捨てるように言うと、立ち去ってしまった。
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 だが、その後も執拗に訪ねてくる陳明亮に根負けし、呉芳は徐々に心を開き、緑茶占いを教えてくれた彼女の友人の話を延々と語り始める。それは長い長い家庭内暴力が生んだ悲劇の物語だった。父親の繰り返す母親への暴力がやがては娘による殺人を引き起こし、その殺人の罪を母親は娘の代わりに引き受けて入獄したのだという。陳明亮には、この悲劇は明らかに呉芳自身の者に思えて仕方なかった。だが、一向に認めようとしない呉芳。物語が呉芳にとって、どんな意味を持つのかが明確でない以上、二人の関係は物語を話し手/聞き手から先に進むことは出来ない。男性に対して明らかに嫌悪の態度を示す呉芳の心には明らかにトラウマが見て取れる。だが、そこに触れることは出来ない。二人の関係は膠着状態に陥り、呉芳とは一切連絡が取れなくなってしまう。

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