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馮小剛《手機》

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 手機といえば、中国語で携帯電話のこと。大哥大などと言ったのは十年以上前のことで、最近はとんと聞きません。そりゃ、やくざの親分(これが大哥大の原義)でなくてもみんな持っていますから。

 昨日は授業の準備で古い香港映画を見直していましたが、寝しなに口直し(?)に最新作の「手机」(2004年正月公開)を早送りしながら観てしまおうとしたら、結構しっかり全編観てしまいました。期待以上に面白かったです。とはいえ、葛优主演の映画って、トレンディドラマとしては上出来だけれど、映画としてはどうか…というのが「大腕」以来の評価でした。時代の先端を行く風俗を上手に使って映画にする才能はピカイチです。前作(?)の「卡拉是条狗」にしても飼い犬に税金がかかるようになって貧乏な一家は大騒動という人情話でしたし、基本的には才人だけれど、それ以上の評価は出来ないという印象でした。
 今回も携帯電話を材料にした映画で、今の中国、とくに北京の風俗をよく描けていて、実に秀逸ですし、映画のなかで交わされる会話、そしてSMS(Short Message Service:携帯を介してやりとりされるメール)の凝縮された表現は実に機知に富んでいますから、中国で人気を博する理由が良く分かります。登場人物は実在のトークショーの司会者のパロディで、その人物の女性関係(妻、二番目の妻、若い愛人)を中心に展開します。平たく言ってしまえば、いかに他の女にばれないように浮気をするかという目的のために携帯が使われ、その使われ方の面白さが映画の面白さにつながってくるので、携帯愛用派だけでなく、私のような携帯敬遠派(?)にとっても、面白く見られる作品に仕上がっていると思います。

 それだけであれば、単なるトレンディドラマなのですが、今回すこし、おや?と思わされたのは、冒頭で電話が村に一つしかない農村から出稼ぎに出ている鉱山に電話をかけるシーンがあって、これまた今というよりも30年ぐらい前の雰囲気ですが、電話が切実なコミュニケーションのツールとして使われていたことが暗示され、登場人物の一人が繰り返し呟くように、「我々は余りに近くなりすぎた」という感慨とのコントラストが鮮明に描きだされます。「周りに迷惑」とか、「うるさい」とかいった浅薄なケータイ批判ではなく、コミュニケーションのツールが発達しすぎた現代人が突き当たった隘路を描き出せている点では出色といえるのではないでしょうか。最後に携帯を捨ててしまうのは教訓的なオチで余り好きではありませんが。

 むろん映画から余り社会批評的な視点が出てくるのを歓迎しない人にとっては面白くないかも知れませんが、面白い作品です。日本でも公開されるといいな。

 蛇足ながら、意外な収穫は范冰冰(カバーで右側に移っている女優)ですね。中性的で理知的な印象のあった彼女ですが、この映画では主人公の愛人役として凄く濃厚な役柄でしたが、見事に演じきっていました。出番がやや少ないのですが、凄い存在感、とても良いです。他の作品も探してみたいですね。
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Comments

自己レスです。
范冰冰、中国のニュースサイトでも結構話題になっているようです。この演技だけで決まったわけではないでしょうが、歌手デビューも決まったそうです。
ogawat | 2004/10/15 04:46 PM

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