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張愛玲といえば…

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そろそろ次のお仕事モードに入らねばならないのですが、ハードディスクの肥やしになっているファイルをサクサクと削除処分していたところ、授業で使ったビデオクリップが出てきました。思わずクリックして見入ってしまいます。上海を舞台にしたテレビドラマ「老房有喜」の一部なのですが、そのなかに出てくる上海の風景(結婚用写真展:日本のワタミという会社が進出している)が珍しくて、拾ってきたものです。

それを久しぶりに眺めていると思い出したのですが、このテレビドラマ、さすが上海を舞台にしているだけあって、戦前の上海のエピソードに絡めて、登場人物が張愛玲について色々と語るんですね。趙薇演ずる吉祥と台湾のお金持ちの親父さん(のちに実は吉祥の祖父と判明、ってネタバレまずいかな^^;)がともに張愛玲ファンということで意気投合したり、昔の上海の通りの名前(霞飛路)から張愛玲の小説に話が飛んだり、脚本を書いた人は相当な張愛玲ファンなのだろうと思います。
張愛玲(1920~95)は上海生まれで、1943年に「沈香屑」を発表して以来、「茉莉香片」「傾城之恋」「金鎖記」「封鎖」など香港・上海を舞台にした作品を発表し、人気を博しました。都会で生きる男女の姿を繊細な筆致で描いた作家として有名。最近は彼女の作品「傾城の恋」(1984)、「半生縁」(1997)が映画化され、これまた人気を集めているため、一時期は戦後に彼女が書いた反共小説ゆえに中国本土ではほとんど抹殺され、全く誰も顧みられない作家でしたが、近年は非常に人気があります。

そのせいか、ドラマの最後の部分でヒロイン演じる趙薇が語るキメのセリフは、張愛玲の小説からの引用でした。次のようなものです。
我要你知道,在这个世界上永远会有一个人等着你,无论是在什么时候,无论你在什么地方,反正总会有这样的一个人

う~ん、私は張愛玲も結構好きですが、このセリフを見てどの小説からだと分かるほどのファンではありません。でも、気になるな…ということで、色々手を換え品をかえして、調べてみると、67年の作品「半生縁」でした。失ったはずの愛情を取り戻すというのは、このドラマのエンディングにぴったりというか、むりやり「半生縁」に合わせたという感じもするぐらい(^^;)のものです。覚えていないのですが、映画版の「半生縁」でもきっと使われていたと思います。もしかしたら、映画だけを見て、そちらをパクったのかも知れません。そのせいか、小説原文とはちょいと違います。
我要你知道,这世界上有一个人,是永远等着你的,不管是在什么时候,不管你是在什么地方,反正你知道,总有这样一个人。'

これはヒロインからの手紙の中で語られる言葉です。
貴方に知っておいて欲しいのは、この世界には、貴方をいつまでも待っている女がいるということ。いつでも、貴方がどこにいようとも、ともかくね、私がいるって。

これだけ強烈な愛情のメッセージというのもなかなかないでしょう。こう言われた人間が本当に幸せかどうかは悩むところです(^^;)ドラマ版では、「会有」という一言が加わっていて、語り手の確信(~はずだ)を示します。小説よりドラマのセリフの方が強いニュアンスの言葉になるのはやむ得ないのでしょうね。。また、小説中の一節で、「反正你知道,」が省略されていますが、これは「你知道」が英語で言う「you know」と訳せる言葉なので、「でしょ、ねっ!」くらいの感じです。むしろ口語的なドラマの方で省略されてしまったのは面白いところですが、これは小説上は口語的な筆遣いで女性的な雰囲気を出す効果を期待したのに対して、ドラマではキメのセリフですから、余計な言葉をそぎ落としたかったのでしょう。

うっ、なんでこんなに長くなったのだろう…ここらで止めときます。
趙薇Vicki | comments (0) | trackbacks (0) | pagetop↑

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