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緑茶

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《緑茶》も是非日本で公開して欲しかったのですが、中国でSARS明けの昨年に上映されてもう一年。どうも日本で公開という話は聞きませんね。どうしてあれだけ良い映画が公開されないのに、どーでもいい映画が山ほど公開されるのか、商業ベースとは言っても残念でなりません。
《緑茶》は趙薇、姜文主演、助演には方力均となかなかの豪華スタッフです。ノーギャラで日本語字幕つけるぐらいのことはするので、是非、関係者の方、いまからでもお願いします(^^;)

いずれ公開されたらレビューを書こうと思っていて、それきりだったのですが、なかなか書き出すと、終わらないのですが、あらすじというか、私なりの《緑茶》解釈を書いておきます。以下、ネタバレ覚悟で読んでください。
 この映画の見どころは趙薇の演じる一人二役であり、このアンビバレントな役柄に映画の核心部分がある。
 一人は大学院生の呉芳、また一人はバーのピアニスト朗朗。この二人は全く対照的な性格で、眼鏡をかけた呉芳は几帳面な性格で恋人もおらず、(そのため?)毎日のように紹介所の斡旋でお見合いを繰り返し、その席では必ず緑茶を注文して二人の愛情の行く末を占うという奇妙な行動を繰り返している。もう一方の朗朗は明朗そのもので、派手な服を着て、夜な夜なピアノを弾いては、花束を捧げる男性なら誰とでも寝てしまう。
 ある日、姜文演ずる陳明亮はお見合いで呉芳と知り合う。会ってすぐに緑茶占いを信じるか信じないかで喧嘩となってしまい、席を立つ呉芳。陳明亮は追いすがるようにして声を掛け、ささやく。「これからホテルの部屋を取って、ゆっくり…」破廉恥な言葉に呉芳は激怒して、その場でタクシーを呼んで立ち去った。ところが数日後、陳明亮はわざわざ呉芳の学校校門前で待ち伏せ、謝罪の言葉を並べ立てる。彼も婚約者を親友に奪われ、自暴自棄になっていたのだという。呉芳はいささか同情して陳を見る。そこで陳はいった。親友の元へと去って行く女を思い切り殴ってやったのだが、心が晴れなかった、と。「殴る」という言葉を聞いた途端、呉芳は顔色を変えて、「私は女を殴る男が大嫌い!」と吐き捨てるように言うと、立ち去ってしまった。
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 だが、その後も執拗に訪ねてくる陳明亮に根負けし、呉芳は徐々に心を開き、緑茶占いを教えてくれた彼女の友人の話を延々と語り始める。それは長い長い家庭内暴力が生んだ悲劇の物語だった。父親の繰り返す母親への暴力がやがては娘による殺人を引き起こし、その殺人の罪を母親は娘の代わりに引き受けて入獄したのだという。陳明亮には、この悲劇は明らかに呉芳自身の者に思えて仕方なかった。だが、一向に認めようとしない呉芳。物語が呉芳にとって、どんな意味を持つのかが明確でない以上、二人の関係は物語を話し手/聞き手から先に進むことは出来ない。男性に対して明らかに嫌悪の態度を示す呉芳の心には明らかにトラウマが見て取れる。だが、そこに触れることは出来ない。二人の関係は膠着状態に陥り、呉芳とは一切連絡が取れなくなってしまう。
 陳明亮の婚約者を寝取った親友は、彼を憐れんでピアノバーへと誘う。「どんな男とでも寝ちゃう子がいるんだ」陳明亮にバラの花を持たせて、ピアニストの朗朗を誘うよう勧める。そこで初めて朗朗を見た彼は愕然とする。「呉芳ではないか!」呉芳と呼びかけても当然朗朗は答えない。呉芳への思いに悩みつつ、余りに似ている朗朗に惹かれて、花を捧げると、果たして彼女は陳を伴って自分の部屋へと誘った。逢瀬を繰り返すたびに繰り返し問うても朗朗は何も答えてくれない。親友は言う。女にはローマ型、森林型がある。森林型の朗朗と付き合っても、迷い道に踏み込むばかり、やはり呉芳がよい。きっと全ての道はローマに通ずるのだから、と。陳は答える。もちろんそのつもりだが、会えないのだから仕方ない、と。風呂場からも呉芳の携帯へと電話をかけ続ける陳。何度かけても虚しく相手の不在を告げるメッセージしか聞こえない。
 音信不通だった呉芳とようやく連絡が取れた。パーティに誘い、陳は自分の意思を明確に告げたが、呉芳は陳の気持ちに答えない。いらだつ陳。呉芳の内心のトラウマが解決されない限り、愛し合うことは不可能に思えた。友人達がガールフレンド同伴のパーティを開こうと誘われた時も、呉芳を誘い出すことは出来なかった。困り果てているところに、偶然朗朗とすれ違う。陳は強引に朗朗に同伴するよう頼みこみ、パーティへと向かう。
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 パーティでは皆が朗朗の美貌に驚き、嫉妬した。その席で朗朗は意外にも「緑茶占い」が得意だと言い出す。ならばと皆が所望すると、陳の親友のガールフレンド(陳の元婚約者)を占いながら、「狡猾で男の歓心を得るのが上手いが、いずれ男に捨てられる」と罵倒してしまった。激高するガールフレンドは彼氏に八つ当たりし、彼氏はガールフレンドを殴って黙らせた。その瞬間、皆は信じられないものを目にした。朗朗が急に顔色を変えて、「女を殴る男なんて最低」と叫んで初対面の男にビンタを食らわせたのである。更に信じられないことに、陳も同時に立ち上がり、朗朗の手を引くといきなり走り去ってしまった。
 走り去った陳と朗朗は何も言わずにホテルに入る。そして、ホテルの長い長い廊下をひたすら歩き続ける。陳のモノローグ。「とうとう見つけたのだ。もう離さない」。そう、やはり朗朗は呉芳だった。一見正反対の性格の二人は、実はどちらも男性の暴力に対する強い忌避で共通しており、その内心のトラウマが二重性格となって表れていたのだ。そのトラウマを初めて理解してくれた男性が陳であった。長い迷宮のような道を抜けて漸く二人は一つに結ばれたのだった。
趙薇Vicki | comments (0) | trackbacks (3) | pagetop↑

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